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イラスト中心で自由な感じ。[ユルく楽しくオリジなる]なブログです。

ノベル[フォトグラ!]piece3
~花鳥フウ月~

春めいてきた気候に、のどかな会話。カエデは腕まくりをしてもう一度バンダナを引き締める。

「しかしなぁ。チカも昔は可愛かったのに」

「それにしても、お兄様はお顔が広いのですね!フウには友達がいませんもの…素晴らしいですわ!」

チカとカエデ。二人はどういう関係なのだろうか?そしてお宝、天使とは。そんな疑問よりも、フウには兄の方が大切なようだ。
「さてお兄様。そろそろ…帰りましょうか!」

まるでコントでもしているようにズッコケたカエデは、フウにツッコミをいれる。

「あのなフウ。今日は写真を撮ってもらうって言っただろ」

「え?え?…あら!すみませんお兄様!フウってば、また忘れていましたわ!!」

頬に手を当て、真っ赤な顔をすると、カエデがすぐにフォローを入れる。

「いいよいいよ。フウが忘れっぽいのは昔からだし。それよりほら、そう言ってたら目的地だぞ」

公園。そこには、キャンバスとその横に椅子を置いた少年がたたずんでいた。

「よぉ、待たせたなヒキノエくん!」

「ふわ!?ってカエデ先輩じゃないですか。こっちに来てたんですか?」

フウの真似をしたかのような声で少年は返事をする。黒を基調にしたシックな服装ながら、その幼い顔からは穏やかな雰囲気が感じられる。

「アポなしが俺の流儀だからな。それとも、俺はヒキノエの許可が無いと街に入れないのか!?」

先ほどのチカを彷彿とさせる形相で、ヒキノエと呼ぶ少年を詰問するカエデ。

「どんだけ敵意剥き出しなんですか…あっ」

「フウちゃん!先輩と一緒だったんだね!」

フウを見るや否や、フウに触れようと近寄った瞬間。

「おい、ヒキノエ!!」

今までにない大声で彼を威嚇するカエデ。ヒキノエはすぐにフウから離れた。

「す、スミマセン先輩。馴れ馴れしかったですよね」

「お兄様、この方は?」

すぐに素に戻り、いつもの優しいカエデになった。

「俺の後輩のヒキノエだ。ほら、ヒキノエ!フウに自己紹介だ!」

「怖いなぁ、もう。疋絵十志(ひきのえ・とうし)です。…はじめまして、フウちゃん」

「ふわぁ…はじめまして」

「フウちゃんのことはよく知ってるんだ。先輩がよく写真を見せてくれてさ」

「そして、フウのストーカーになったわけだな。まったく」

「ふわっ!?ちっ違いますよ!」

「ふわっ!まさかヒキノエ様は危ない方なのですか!?」

「だから違うってばぁ!」

会話が湧き上がった後、フウはキャンバスの絵に興味をそそられた。

「ふわ?お絵描きをされているのですか?」

「はは。何だか恥ずかしいな。あんまり人には見せないんだけど」

食い入るようにキャンバスを覗くと、そこには優しい色で描かれた油絵があった。

「これはね、天使の絵なんだ。僕の好きな絵」

「ふわぁ…これが天使ですか」

明るい色で描かれた天使が、一人座り込んでいる。天空を仰ぎ、光を浴びて満面の笑みを浮かべている。

気付けば冷たい風が吹き始めていた。空が冬を思い出したかのように、大きな雲が現れていた。この絵だけが、鮮明さを維持しているかのようだ。

「フウにな、この絵を撮ってもらいたくて――」

カエデの声が遠くなる。フウは絵にすっかり飲み込まれていた。

その不思議な感覚の中で、カエデに質問を投げかけていた。

「てんし、っていうのはどういった職業なのです?あっ、それとも動物かしら?」

「おいおい、何言ってるんだ?フウ」

「うふふ。かわいいです、天使様。うふふふ」

絵本でも読む幼子のように、興味津津といった様子のフウ。

そして思い出したように、いや、本当に思い出してこう言った。

「あの、お兄様?今日は何の用なのです?フウにごあいさつですか?」

きょとんとした顔で、カエデを見つめるフウ。

「何の用って…」

そう言いかけて、カエデは諦めるかのように肩を落とした。そして、フウの持ってきたバッグを指さして答える。

「それ。俺のバッグ」

「ふわ?」「持ってきてもらったんだよ。その中に俺のカメラとバインダーが入ってるから、確かめてくれないか」

「え?え?…あら!すみませんお兄様!フウってば、また忘れていましたわ!!」

大事に抱えていたバッグの中身を夢中で漁ると、たしかにそれらしい物が入っていたことに気付く。

「はは…フウは本当に忘れっぽいなぁ」

「先輩、フウちゃん…また?」

「あぁ、悪いな疋絵。今日は帰らせてもらうよ。ごめんな」

「ふわ?どうしたのですお兄様?今日はお手伝いを…フウにお願いがあったのでしょう?
どうして帰るのですか?」


春の桜。夏の海。秋の紅葉。冬の雪。

心に残る景色に出会ったとき、人が掴みとるモノ。それをずっと、待っている人がいる。



それはきっと、彼女も忘れずにおぼえていられるだろうから…。


==つづく==


//わたしがこのお話をボツにしていた理由。後半かなりシリアスなので、書いてて辛いんです。
//次回で最終話。よければ最後まで、付き合って下さいね。
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