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イラスト中心で自由な感じ。[ユルく楽しくオリジなる]なブログです。

ノベル[ディマイズ]3段目
「やるからには、手加減はしませんよ!」

「ディマイズっ!『騎士』を継承!!」

声と同時に、コジローが胸に左手を添える。すると一筋の光とともに、コジローの右手に『刀』が握られる。背丈ほどあろうかという刀身にも関わらず、自分の身体の一部が如く軽々と振りかざすコジロー。
「ふっ!」

コジローの一閃は、強烈にヒョウドウの胴を捉えた。ヒョウドウが廊下に倒れ込む。

「峰打ちです…それでも、しばらくは動けないでしょう。悪く思わないでください」

(ディマイズ――)

コジローに討たれる前の、ヒョウドウのこの一言は、残念ながら三人の誰の耳にも届いていなかった。

「え?え!?何スか!ヒョウドウが溶けてるッスよ!!」

色つきの粘土かのように、彼の体は融解を始めた。ものの数秒で、人間だった『ソレ』はヘドロへと姿を変えた。

「そんな…で、ですが、私の攻撃は確かに当たったはず!」

コジローらしからぬ、ひどくうわずった声になっていた。剣術に絶対の自信を持っている彼の、渾身(こんしん)の一撃。確かな手応えを感じたにも関わらず、床をのうのうと動き回るヘドロの前に、動揺を隠せずにはいられなかったのだ。

「感触はヘドロなどではなかった。たしかにヒョウドウさんを…。なのにどうして!」

(コジローくん。自分の武器を見てみなよ)

ヘドロのささやきに、冷静なオーコがまず気付く。

「…は、は~ふ~ん?イケメンさん、ソレ…」

「はっ!こ、コレは!刀が泥で覆われている!?」

見れば、細身だったはずの刀は数倍の太さになっている。かなり粘着質な汚泥が刃を包んでいたのだ。

(スキル・『ポリュート』。そいつで泥のクッション、ってわけさ。衝撃をぜーんぶ吸収してくれたよ!し
かもその泥は、あらゆるものを腐敗させるのさ!そんな刀じゃあ、コンニャクさえ切れないね!)

ヒョウドウの言うとおり、泥の隙間からは刃物が見当たらず、金属のサビのようなものが覗くだけだった。

(そーれ、今度はこっちの番!)

ブワワァァ!ヒョウドウ、いや、ヘドロがヒメキたちに襲いかかる。嵐のように迫りくる脅威に、全員があっけなく飲み込まれる。

「うわぁ!ベトベト…しかもすんごい重たいッスよぉ!」

(さっきのより重くしたからね。これで大人しくしててもらうよ。…ずうっとね!)

反撃しようにも、立つことすらままならない状態。

オーコは座り込み、コジローも片膝をつく。

ヒメキに至っては、もはや大の字になって寝ているようにしかみえない。

「うぅ。刀が持てない…。こんな時、一体どうすればいいのです?」

未だ立ち直れないコジロー。さらにオーコもショックを隠せない。

「…はふ~ん…ベトベトだわ~。帰ったらシャワー浴びなきゃ~」

「ちょっとオーコ!そんなこと言ってる場合じゃないッスよ!」

「…はっふ~ん!何を言ってるの~!?乙女はお肌が命なの~!これじゃニオイが取れないわ~」

あくまでマイペースなオーコ。しかしながら、その少しきつめな口調が、確かな怒りを物語っている。

(ん?ニオイ…アロマ…?)

そんな中、ヒメキは数分前の会話を思い出していた。


『…この会場も少しヘドロ臭いわ~。お花でも飾ればいいのに~』

『花ッスか?別に脱臭剤とかでいいじゃないッスか』

『…はっふ~ん!アロマテラピーよ~!これだから男の子は~』


ヒメキの中で、流れ星が瞬いた。

「オーコ!『フレグランス』ッスよ!」

大の字のまま、オーコに向かって叫ぶ。それを一瞬で理解すると、少女は人差し指で宙に円弧を描いた。

「…『ディマイズ』~。『村娘』を継承~!」

姿形は変わらないが、彼女の瞳に柔らかな光が差し込んだ。

「…はっふふ~ん!!『フレグランス』ぅ~!」

しばしの静寂の後、ヒラヒラと舞う花びらが現れる。一枚、二枚。三枚、四枚。徐々に数を増し、次第に辺りは花畑のような景色に変化した。

それとともに、香(かぐわ)しさが漂い始める。すると、なぜか聞こえてきたのは『咳払い』だった。

(ぐわぁ!…ぐぇほっっ!何だ?何をしたのさ!?ち、力が抜ける、ような…)

「…フレグランスはお花の香り~。素敵な匂いでアロマテラピーよ~!!」

「なるほど。フレグランスの芳香成分で、ヒョウドウさんの体内に浄化作用が働いたのですね!」

ヒメキの読み通り、ディマイズでヘドロとなったヒョウドウには、体の浄化をするフレグランスが致命的なダメージとなったのだ。

「ぼ、僕はミルキィちゃんを守りたかっただけなのに…!」

体力が無くなったのか、元のヒト型に戻りヒョウドウがぐったりとした表情を見せる。

ヒメキたちに付いていた先ほどのヘドロも軽くなり、ただの汚れと化している。

「あいつ等(ら)が…ミルキィちゃんに馴れ馴れしくするから…僕は力を利用したまでなのに、どうして…?」

「何を言ってるんスか!ヘドロでベトベトにするなんて、悪いことッスよ!悪いことするなんて、大人じゃないッス!」

ヒョウドウは最後の力を振り絞り、立ちあがる。

「まだやるッスか!?よーし、『ディま――』」


「あれぇ?どうしたんですか~?」

ヒメキが前方に拳を作った時、甲(かん)高い声とともに、緑色の制服を着た少女が現れる。先ほどまでライブのステージにいたアイドル、ミルキィが楽屋に戻ってきたのだ。

「あ!ミルキィ!来ちゃダメッス!!」

「あら王子様!コジロー様にオーコ様も!ヒョウドウ様~。どうしてミルキィのこと、呼んでくれなかったんですかぁ?」

ボディガードが知り合いと一緒にいるなんて、何かあったのかな?と彼に近づいてしまうアイドル。するとヒョウドウはミルキィの腕を掴(つか)み、人質にした。

「ミルキィさん!?やめてください!」

「…悪いことは言わないわ~。大人しく投降なさい~。お母さんも泣いてるわ~!」

コジローとオーコも制止しようとする。

「ミルキィちゃん!僕はね、キミを守りたいんだ!そのために悪者たちと戦ってるんだよ!」

「そうなんですかぁ!それはスゴいです!ところで――」

ミルキィがふっと下を向く。彼女の体がふるふると震えた。そして、ヒョウドウに向かいこう言った。

「どうしてぇ、」

「コジロー様たちがぁ、」


「  傷 つ い て る ん で す か ぁ ぁ あ あ ? ! ? !」

ゴゴゴゴゴ。そんなBGMでも聞こえてきそうな怒号。目を見開き、全身に真緑のオーラを纏っている。

「ひィいい!?ミ、ミルキィちゃん?何か、いつもと違う――」

「ヒョウドウ様ぁ?みんなを泥だらけにしちゃうなんて。ハード過ぎますぅウう!てへっ!いいですかぁ!ミルキィってばぁ、基本はデレなんですよぉ?でもでもぉ。ウフフフっ。コジロー様たちにおイタするような人にはぁ…ツンがでちゃいますからぁぁああ!!!!」

「ツン?…つんってな、なんのこ…と…」

「っっ!ぎゃあーーーーぁあ!!」


それから、長い時間が流れた。長い長い時間。ヒョウドウは、永遠とも思える時間を過ごし、そして倒れ込んだ。

「…はふ~ん。忠告はしたわ~。あたしは言ったからね~」

ヒョウドウに言葉をかけるオーコだったが、返事はなかった。ただ荒い鼻息が聞こえるだけだ。

「コジロー様!ミルキィ、お役に立てましたかぁ?」

元のミルキィ、いや、『アイドル』の状態に戻り、コジローに近寄る。

「まさか、ヒョウドウ様があんな人だったなんて!うえーん」

「ヒョウドウさんも反省して、もう悪事はしないと誓って下さいましたし、これにて一件落着ですね」

「そのヒョウドウッスけど、完全に上の空だったッス…トラウマにならないか心配ッスよ」

未だ彼は横たわったままだ。その姿はさながら、砂浜に流れたヘドロだ。

「いいんです!ミルキィの大切な王子様にひどいことするなんて許せません!あっ、今のはヒメキ様のことじゃなくって、コジロー様のことですよ?『心の王子様』って意味ですから!!」

「まぁ、ヒョウドウさんもミルキィさんのためにしたことです。今回は大目に見ましょう。」

「流石ですコジロー様ぁ!ウフフフフ!」

「…はふ~ん。アイドルさんが一番怖いわ~」

会場のスタッフも集まり、今回のヒョウドウの件が明らかとなった。しかし、コジローの言っていたとおり、反省の色が見られるということで処罰等はなかった。


そして、ヒメキはこう思ったのだった。

(俺…今回ほとんど見せ場が無かったッス)


==おわり==


//三人はこれからも戦い続けます、的な感じですね。
//主人公があまり活躍していないですが、いいんです。周りが盛り上げるのが、物語というものなんです。
…と、だれかが言ってました(笑)。
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