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イラスト中心で自由な感じ。[ユルく楽しくオリジなる]なブログです。

ウルエのかなた~ウルエ編~
 ……………………。
 ねむ……。今何時……?

 !?

**「もうこんな時間じゃんっ! どうしていつも起こしてくれないの!?」

 私はすぐにパジャマを着替え、制服に身を包み、身支度を整えた。

**「行ってきまーーす!」
**「ふぃー♪ きっもちいぃー! やっぱりココは最高だわー」

やめやめ。どーせ走ったって、今からじゃ遅刻は確定だし。小高い丘から、街を見下ろす。景色は良いし、山からの風は私を優しく包み込む。

**「そら、きれいだな。コバルトブルーって感じ?」

どうでもいいことばかり考える。昔からそうだ。数学とか世界史とか。興味の無いことは5分で忘れちゃうのに(そう言うとその科目のセンセーに怒られるな)。美術とか音楽とか、正直世間一般では必要の無いことばかり覚えてしまう。(違うよね、必要だよね!)
親譲りの何とかだ。父さんは昔、陸上の選手でチョー速かったんだって。……ホントか? ってたまに思う。でも、自分の脚力がそれを顕著に受け継いだらしく、わたしも流されるように陸上部に所属している。

**(でも、顧問のセンセー厳しいし。あー部活休みたーい!)

 いつまでもこうしてはいられないし。学校行こ。

**(ヤバっ。校門閉まってる……)

 でも、慌てない。遅刻レベルが上がる毎に、どんどん冷静さがアップするものなのだ。

**「……よっ! っと」

 こんなこともあろうかと、校門の傍の茂みにハシゴを準備済みなのだ。私は颯爽と校内に侵入し、すぐさま教室に滑り込み、

**「…信田さん。ちょっと」

 げっ。この声は……。振り向くとそこには、髪を後ろに結った黒いスーツ姿の女性が。

**「ハハ……。許南センセ。き、奇遇ッスねこんなところで」

 学校ではしょっちゅう会う顔に、私は朝から既にうんざりしていた。私のクラスの担任で陸上部顧問、それがこの人。初めて会ったときから、なんか苦手なんだよねー。
 ……ムダに美人だし。

**「きょ、今日はそらがきれいですよー? ほらぁセンセイも見てください。この青空を!」

**「…… …………」

私から一言、よろしいだろうか。
怖ェェぇぇ!! もーやだよー! おうちかえりたーい!!


…………………………………………やめる。
放課後の部活で、とことんしごかれた私は素直にそう思った。部活やめる。絶対、やめてやる。そりゃあ遅刻して悪かったけどさ。あからさまに私ばっかり走らせなくても。皆の倍は走ったんですが。あーあー。もっと楽したいなぁー……。
あれで昔は運動音痴だったとか、絶対ウソ。信じられない。噂なんてあてにしないようにしよう。きっと本当は、ジャングルの奥地で珍獣の狩猟を……。

**「おいそこの美少女よ。たそがれてどうしたんだ?」

 後方から聞き慣れた声がした。……父さんだ。くたくたのスーツを着て、気さくに話しかけてきた。……だらしないなぁ。どっかのセンセ―を見習ってほしいものだ。


ウルエうるえ



**「今日は仕事が少なくてな。早めに片付けてきたんだ」

 聞いてもいないのに話を続ける。父さんは話し好きだ。こちらが黙っていると延々止まらない。

**「恥ずかしくない? 自分の娘を美少女とか」

**「あぁ、分かっている。一番はママだからな。ちゃんと分かっているぞ」

 父さんの会社と学校が同じ方向なので、たまに一緒になるとくだらないトークをする。こういうのがよく聞く『仲良し親子』なんだろうか?

**「っはっはっは! それは災難だったな! でもなぁ。校門を乗り越えるだなんて、そんな腕白さ、誰に似たのやら」

 絶対に父さんだよ。母さん大人しいもん。淑女だもん。中学・高校と音楽学校に通ってた、お嬢なんだモン。
 対して父さんはスポーツ野郎だしさ。いっつも私に、『パパをインターハイへ連れてって!』とか言うし。ホントに陸上が好きなんだよな。よくそれで母さんと付き合えたもんだ。

**「……しかし、その女先生は気になるな。きつくて美人だなんて。パパ、会ってみたいなあ」

 こんなこと言ってるし。父さんはまだセンセーに会ったこと無いんだっけ? そういえば、もうすぐ三者面談だな。よし、母さんにお願いしよ。

**「もし父さんが学校来たら通報するから。名前出さないでね」

**「どうしてやらかす前提!? パパ何もしないよ!?」

 やれやれ。うちの父さんはこうやってからかうのが一番。笑顔の時が一番イイ。ま。もうちょっと走ってみようかな。父さんのためにも。
 父さんは不意に上を向いた。空を眺める時、この人は急に静かになる。まるで何かを思い出すように。そして私に語りかけてきた。

**「なぁ、うるえ。聞いてくれ」

**「んー? なーに父さん?」

**「パパ、夢があってな……」

 父さんの思い出話。初恋相手との約束、その時の夕焼け空の話。
 空には色々な表情があるらしい。時には優しく、時には厳しい。でも、いつだって私たちを包み込んでくれる。そんな人になれ、っていうのが父さんの口癖だ。

**「なれるかな、私」


信田ウルエ。私の、名前。父さんがつけてくれた私の名前。
父さんの、初恋相手との、大切な想い出――。

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