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イラスト中心で自由な感じ。[ユルく楽しくオリジなる]なブログです。

ウルエのかなた2~ぐうぐう~
 今日の空は鈍色。重たい曇天だった。

 今日は二人組でのストレッチから部活が始まり、柔軟運動をしていると、背中越しに小さな声が聞こえた。
「やっぱり、ウルエって彼氏がいるんじゃないのぉ?」

 長座体前屈のベストを更新したのではないだろうか、キラちゃんの体からストレッチを超えた何かが伝わってきた。

「いててっ! きゅ、急にどしたの、キラちゃん? 最初っから激しすぎない? 柔軟の意味が――」

「もんど~むよぉ~♪」

 たしかに最近の私は、駅までの帰り道はキラちゃんに、電車の中ではリクに愚痴を聞いてもらっている。その結果、キラちゃんへの愚痴が少し減ったのだ。

 それが何故に彼氏が出来たことになるのか、と思っていたが。きっと私が恋をしても、彼に愚痴ばかり言っていそうだもんね。現状と変わらない気がする。

(いやいや。それじゃまるで)

 私の頭脳が仮説を形成する直前で、大腿二頭筋と口とが大きな悲鳴を上げる。

「にぎゃあ! ギブギブぎぶ! いないって、いないから止めてー!」

 練習開始二分、私の筋肉はしっかりと準備が整った。


「ん? あいつ、また一人か」

 最近になって見慣れた小柄なジャージ姿が、私の視界に映る。

 うちの高校は男女混同で練習を行っており、よく一緒にグラウンドを走ったりする。だからこうやって柔軟体操をしているときに、奴を見かけることもよくあることなのだ。

 主に二人組から弾かれてしまった、一人姿が多いけれど。

「おーい、リクぅ。ちょっとこっち来なよー」

「ちょ、ちょっとウルエ!」

 声を出してから気が付いた。そういえばキラちゃんはリクのことが、いや、男性全般が苦手なのだ。教室でも男子とは極力話さないようだし、教師が男性というだけで嫌いな授業もあるようだった。

 私も数学の授業が苦手だ。それはきっと、許南センセイが教えているからに違いない。転じて私はあの先生が天敵ということになる。そういうものなのだろう。

「な、何ですか、ウルエ先輩? 一人で納得して」

 気付けば緊張したままのリクが傍に来ていた。う、流石に自分から呼んでおいて追い返すわけにもいかないな。キラちゃんには悪いけど、

「おいで、さっさと柔軟しなさい」

「わ、えぇっ? あ、あの……」

と、リクを地面に座らせストレッチを開始させる。

 コイツの体、かったいな! 私が後ろから軽く押しても、彼の手は彼自身の膝の上にあった。よぅし、こうなったら。

「う、ウルエ先輩、ちょっと! 自分でできますから!」

「問答、ムヨウぅ!」

「ぐぐぅう!」

 おそらくはさっきよりもずっと力強く、私の腕は一直線を描いた。ペキペキと不自然な音がしたが、個人的にリクの鳴き声の方がよほど耳に残った。

「う、ぐうぅ!」

「……」

 面白い。なるほど、さっきのキラちゃんもこんな気分だったのか。普段聞けないような声が出るから、好奇心が降ってくる。

「先輩、後ろ、うしろぉ!」

「…………」

 え。泣き顔とも怒り顔ともつかない彼女の顔が、今度は鋭い視線で私の背を圧迫する。ゴメン、放っておいてしまって。


 ちょっと反省する点もあったけれど、それからは私、キラちゃん、そしてリクの三人で練習する機会が増えたんだ。きっと、間違いじゃなかったと思う。

 どうして私は走るのか。今だけは、忘れていてもいい気がした。いや、もしかしたら。三人で一緒にいるこの時間の中に、答えがあるのかもしれない。そう思った。

 そうやってまた、私は逃げ出していたのだ。

=つづく=

答えって、あるのかな?

次回、男の子の夢。
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