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イラスト中心で自由な感じ。[ユルく楽しくオリジなる]なブログです。

ウルエのかなた2~僕と蛙と大海と~
 何故夜空が暗いのか。星が光り輝いているのか。

 僕はそれを知りたくて、一生懸命調べた。


 昔から本を読むのが好きで、書店が僕の遊び場だった。何か知りたいことがあると、すぐに店の奥に駆け込んだ。
 “井の中の蛙、大海を知らず”ということわざがある。小さな常識に囚われていたら、広がる世界の先を知ることはできない。僕は、そんな蛙にはなりたくなかった。

 そうして、広大な世界に目を向けているつもりが、“世界”という書店の一コーナーに閉じこもっていただけなのかもしれない。


 僕にとっての大海。インターハイ……、全国総合体育大会。その大海は、運動の苦手な人はおろか、並大抵の人間を飲み込んでしまう。体育の通信簿が例年「2」の僕にとって、世界のかなたの出来事だ。

 そんな大海をよく知る人がいた。その人は急に現れて、僕のいる井戸を明るく照らしてくれた。

「なになに、苦手な相手の避け方……?」

「うわ、ウルエ先輩! おお、お疲れ様です!」

「よッス! お疲れ、リク」

 今日も気になることがあって、本を探していた。

 興味本位で手を出すと、火傷することがある。まさか、こんな本を読んでいるタイミングでウルエ先輩が現れるなんて。

「陸上関連の本でも読んでるかと思えば、自己啓発本ねえ。なに、誰か避けたい人でもいるの?」

 助かった。大海を知るその人は、小さなことは気にしないようだった。


 成海先輩はどうしたんですか? と尋ねると、今日は部室の掃除で遅れるのだと答えてくれた。

「だから本屋で雑誌でも見て待ってようかと思ったらさ、後輩が真剣に本見てるし」

「僕、本屋さんが好きなんです。なので、深い意味はありません」

 人間関係の向上という本を棚に戻し、そそくさと店を出る。いつもあんな本を読んでいると思われたくなかった。

「リクって、いっつもあんな本ばっかり読んでるの? 偉いねえ、勉強熱心で」

「そんなこと、無いですけど」

 いろいろな意味で、先輩は鈍いようだ。先輩にとっての“あんな本”とは、勉強になる本なのだろう。純粋に、そう思っているようだった。

 先輩といると、気が置けない。少し、安心した。

 帰り道に二つ並んだ影は、僕の目に丸く見えた。


=つづく=

大会と大海と。かかってますよと。

次回、それぞれの思い。
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